技術の進歩

公開日: 2012年5月14日月曜日

どうもお久しぶりです・・・。

引退した後も色々と裏で何かしてたりする元設計・翼班長のHです。

去年に続き新入生がいっぱい入ってくれたそうで、先輩たちから見たらすごい発展です。
これだけ入ったなら、きっと人力センスに富む人も混じってくれてると思います。今後の発展にますます期待。

それはさておき、私も人力に入ってからついに4年目に突入してしまいました。この3年間、人力に尽くしてきた以上、残せるものは残していこうと思います。これまでの機体の問題点や、要改良点など、まだまだ東海大の低翼機は技術改良の余地があります。そしてそれを考え続けた結果などを、一部書いてみようと思います。



さてさて、我がチームの機体ですが、実は問題点はここ数年で粗方改善されてきています。

低翼機と聞くと、高翼機と全然違う機体と思われるかもしれませんが、意外とそうでもないことが多いのです。




まずは翼。翼の構造に関して言えば、完全単桁片持ちというだけで、実は他チームと大差ないのです。東工大Meisterさんが同じ構造だったりします。分割数の違いくらいでしょうか。


次にフェアリング。フェアリングに関しては、リカンベントスタイルを採用しているチームであれば、大体は同じ形状であったりします。低翼も高翼も違いはほとんどありません


そして電装。書かなくてもいいと思うくらい、低翼も高翼も同じです。当然っちゃ当然ですが。


さらにペラ。高翼も低翼も同じです。前についていたり、後ろについていたり、基本は同じです。


最後に駆動。ギヤボックス→ドライブシャフトの、これまた同じものです。チェーンじゃないだけです。駆動効率非常に良いです。ただ、ウチはワンウェイクラッチをなぜか採用しているので、非常に重いです。改良の余地ありです。自転車と違って、系の慣性モーメントも小さいですから、回転を止めた時の足にかかる負担は少ないと思います。



じゃあ何が一番違うかというと、最大の違いは「フレーム」なのです。実はここ数年の問題は全て、フレームが原因の問題だったりします。

高翼機は、フレームが非常に軽いです。見たまんま簡単な構造で、かつ材料の特性をよく利用できるスタイルです。

つまり、うちのフレームが軽く、効率的なものであれば、高翼機と良い勝負になるのです。機体重量30kg台も夢ではありません。



では、色々と考えた結果たどり着いた、今考えられる一番合理的(?)なフレームを紹介しようと思います。



写真1

こんな感じです。

今までと何が違うのかと思われるかもしれませんが、実はものすごい変化を遂げています。


特筆すべきは、メイン三角形に「丸パイプではなく、角パイプを用いている」ところです。

高翼機であれば、基本的にパイプ同士の接続角度は90度となると思います。しかしながら、TUMPAの構造では、どうしても鋭角となる箇所が多いのです。画像を見たらわかると思います。そうなると、パイプを削る工程が非常にめんどくさいものになります。

角パイプを採用することにより、その工程がほとんど無くなります。真っ直ぐ切るだけです。

利点はそれだけではありません。ウチの場合、角パイプを採用することにより、さらなる利点が発生します。




近年(というよりずっと)のウチの機体の最大の問題は、前重心なところです。
前重心になりやすい理由は、高翼機と異なり、翼の風圧中心の直下あるいは直上位置にパイロットを配置できないためです。翼の上に座らせるのもどうかと思うので・・・。すなわち、機体総重量の6割を占めるパイロットの重心が、風圧中心よりも前に配置されている以上、確実に頭下げモーメントが発生します。実際、2010、2011の機体は、滑走中に昇降舵を動かさないと、前輪が接地している状態で後輪だけが浮いている状態が見て取れました。

写真2

後輪の前あたりにある大きな丸パイプが、翼の接続部です。パイロットはそれよりも前に座らなければならないため、どうしても舵を切るか、後ろに重りを搭載しなければなりません。しかし、いずれにしても抗力増加につながるため、人力飛行機にとっては良いこととは言えません。

一番良い解決策としては、翼の位置を前に移動させることです。しかしながら、この旧フレームの場合、翼を前に出すことが非常に困難です。そのため、手っ取り早い解決策として、パイロットの背もたれをなくし、翼のマウントを延長させる方法があるのですが、この場合、フレーム下部にパイプが2本存在することとなり、非常に非効率的です。製作も困難です。しかも接続部固定部は非常に堅牢で、CFRPプレートを用いているので、それを延長するとなるとkg単位で重量増になる可能性があります。

さらにこの接続部は非常に複雑になっていて、いるのかいらないのか分からないようなパイプもあったりします。とにかくグチャグチャです。精度も出しにくいです。しかもパイプ多用のため、製作が超絶困難です。作業工程増加の原因はこいつだったりします。フレーム班泣いてます。





とにかく、人力飛行機のフレームにおいて、シンプルなものが一番合理的かつ高性能です。というわけで、写真1のようなものが出来ました。斜めのパイプは全て45度にしています。変な角度にすると加工が非常にめんどくさくなります。なので45度で統一しました。

各部詳細を書きます。

今さらですが、なんでこんなことわざわざブログに書いてるのかといいますと、他チームさんや事務所さんがブログを見た時に、こういった技術的なことが少ないようでは、話もはずまないでしょう(?)。それにマネされる心配もほぼないですから。低翼ですし。それにこれを見たメンバーが色々と知識や技術を吸収してくれると一番良いのですが。





まずは角パイプ同士の接続部です。

写真3

同径角パイプ同士の接続であれば、このように薄いCFRPプレートを張り付けることによって、接続部は非常に高剛性となります。信頼性もすごいです。もしかしたらねじ止めでもOKかもしれません。それなら再利用も可能ですし。これでいちいちCFRPクロスを巻いたりする工程が無くなります。しかも平らな床に寝かせることで、製作が楽になります。転がらないし、なにより径が同じなので。
ちなみにユニバーサルジョイントがすごいことになっているのは、ドライブシャフトの長さを考えなかったためです。他は考えてあるのにこういったところは手抜きです。改善します。本当はギヤボックスはもっと上に配置する予定です。

そもそも、今まではギヤボックスという平面部品と丸パイプとを固定するのが非常に困難でしたが(写真2を見るとわかります)、これなら一気に楽になります。




次は、フレームとテールブームの接続部(厳密には違います)です。

写真4

ここが一番苦労しました。てかまだ満足していません。高翼機と違い、メインフレームとテールブームは分割されています。というより、真っ直ぐじゃないのです。真っ直ぐだと、高翼は非常に楽で軽くもなるのですが、低翼の場合、プラットホームから出る際に、プラットホームに接触してしまう恐れがあります。てかほぼ間違いなくぶつかります。なので、どうしても分割して角度をつけなければなりません。
で写真4が、その接続部です。写真2のような感じになるのですが、すごいことになってます。クロスぐるぐる巻きです。これは作業工程増になるので、写真4のような、準トラス構造にしてみました。ここはツッコまないでください。とりあえず楽になるように考えただけなので・・・。解析すると問題はなさそうなのですが、やはり心配です。





さて、最大の問題であった、翼の接続部について書きましょう。

写真5

すっきりしました。青いパイプは主翼最内翼の桁です。かんざし方式は今までと変化はないのですが、写真2と比べると、色々と変わっているのが分かると思います。

これはメインフレーム下部をアップにした写真なのですが、見ての通り、パイプに穴が複数空いています。つまり、メインフレームの下のパイプをレールにし、ピンで固定したものです。これにより、翼の位置を30㎜間隔で前後させることが可能となります。フレーム自体に空いている間隔は60㎜なのですが、3㎜厚のCFRP(あるいは超ジュラルミン)プレートに30㎜間隔で空いているので、それが可能になりました。

写真6

今までの接続部は、写真6のようなものなのですが、よく見ると翼桁との接続部は、プレートと離れた場所になっています。中央パイプ上でガチガチに固定されています。これは非常に非効率的なのです。

翼の捩りをフレームに伝えるため、CFRPプレートと翼桁はガッチリ固定される必要がありますが、写真6を見ると、翼桁→中央パイプ→CFRPプレートと、中央パイプがなぜか仲介しているのです。長さだけ見るとせいぜい片側300㎜程度です。

つまり、翼桁→CFRPプレートとなれば、捩りの伝達効率は一気に向上します。さらに無駄な接続部も減るので、軽量化にもつながります。

写真5を見ると、翼桁がプレートに直に固定されることが分かると思います。しかも、プレートの面の力は偉大でして、捩り耐力もずば抜けていますし、加工も楽です。見る人が見れば、今までのと比較するとこれの効率の良さが一発でわかると思います。ちなみに青パイプ上にあるL字金具は、しっかりと固定される予定です。CAD上での表現が難しかったので、描いてません。


さらに従来の接続部は、プレートと中央パイプを、捩り破壊を防ぐためにも、完全に固定する必要があったのですが、新方式なら捩りを考慮する必要はありません。プレートから中央パイプが抜けさえしなければ良いのです。なので、2枚のプレートの間にちょっとUD材でも巻いておけば、飛行中に抜けることはありません。

さらにさらに、フレームに角パイプを用いたことにより、プレートの直角出しが非常に楽になります。

ちなみに、メインフレームとCFRPプレートの間に、小さい角パイプがありますが、これは、メインフレームに用いた角パイプが内径60×60のもので、間隔があまりに小さすぎるので、スペーサーとして30×60の角パイプを間に入れました。これでその部分だけ120㎜を確保しました。高翼とほとんど同じですね。

写真7

裏から見ると、こんな感じになっています。二つのスペーサを小さいCFRPプレートで固定しているのが分かると思います。実はこれが結構重要なのです。翼から発生するモーメントに接続部が耐えるために、ここにプレートがあるのと無いのとではだいぶ違ってきます。


ついでに、接続部の前に2本ボルトがあるとおもいますが、ここにはパイロットのイスがつきます。イスの接続部の規格をレールと同じにすることで、意外と問題だったイスの固定も楽になります。操縦桿もつけやすいです。



実はこのフレーム、とんでもない問題を抱えています。それさえ克服できれば、一気に性能改善です。

その問題とは・・・



翼下面と地面との間が約25cm程度しかない

ということです。今までのおよそ半分です。鳥コンだけならいいのですが、テストフライトでの取り回しは最悪です。高翼の人ならわかるでしょう。


解決策はあります。それは




テストフライトの時だけ足を伸ばせばいい!

簡単なことです。車輪の付いている位置に、30cmほどのパイプを継ぎ足せばよいのです。本番では取り外す。そうすれば軽くもなりますし。
あるいはデカイ車輪を付けても良いです。筑波さんが似たようなことをやっていたので、応用可能かと思いました。とりあえず、テストフライトさえ乗り切ればいいんです。







・・・と色々と書きましたが、東海大の技術改善点はこんな感じです。実はこれらの技術は、基本的に今まで私の中にしかなかった考えです。初公開です。

今までは、自分の代が終わったらそれではいサヨナラといった感じでしたが、それではもったいない。2,3年費やして得た知識、技術を伝えきれないのです。経験者は語るではないですが、3年もやれば問題点や改善方法を思いついたりするものです。




先日行われたパイロット試験だってそうです。体重をほとんど考慮しないで、ただ出力を得られればいいといったものでした。
たとえば体重が30kgの人と、体重が100kgの人がいたとして、300Wを前者が20分、後者が30分出せたとすると、後者が採用されるシステムでした。
人力飛行機において、総重量が一番問題です。基準重量(99kg)から1kg増えると必要出力が7Wほど増加します。にもかかわらず、重量を考慮しないシステムでした。これではさすがに問題です。






今まではこういった技術的なことに関して、縦のつながりが薄かったのです。3年後半からパッタリです。基本的に後輩全任せだったのです。これじゃあ技術は進歩しにくいでしょう。


別に、4年生や3年生は技術を出すのが惜しいわけではありません。むしろ出来ることなら教えたいんです。でも、そういった機会があまりに少なかった。そりゃま研究室も就活も忙しいけどさ・・・


ただ、だからといって、後輩の自主性を尊重しないわけではありません。あくまで経験者は語る程度です。でも、自主性を尊重しすぎるあまり発展しないのでは何の意味もありません。




だからまぁこうやってブログに上げてみるのはいいかなと思って、書いています。


またヒマがあったら書くかもしれません。




あ、ちなみにFMS導入しました。






がんばれTUMPA







  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A