鳥人間コンテスト 後記

公開日: 2014年9月4日木曜日 設計 大会

お久しぶりです。設計担当の花本です。

鳥人間コンテストの放映が終了しましたので、機体責任者(?)として今回の結果と技術的な事を少々書きたいと思います。


1:結果について

今回は残念ながら完走することが出来ませんでしたが、これには明確な原因があります。

一つは


典型的な死亡フラグ・・・!




こればっかりはどうにもならぬ

二つ目

大会直後にデータを収集しましたところ、トンデモない事実が判明しました。




・・・左スポイラ全開やで




まさかのスタートライン直後辺りで左スポイラが故障(?)という予想外の出来事が。閉じてから壊れりゃよかったのにね。TV放送でもバッチリ映ってました。

飛行機について知っている人は分かると思いますが、スポイラは言ってしまえば「失速装置」みたいなもんです。揚力を減らしてかつブレーキをかけるのです。

旋回の際に「片翼をちょいと失速させて飛行機を傾けて~」といった作戦だったのですが、それが裏目に出たのです。

人力飛行機は結構なギリギリ設計をされているものが殆どで、中でもスポイラが故障したとなれば、今回のような結果になるのは目に見えています。パイロットは頑張った方です。失速した飛行機を持ち上げていたのですから。


今回は原因がハッキリとしているのが不幸中の幸いでして、来年は同じミスをしなけりゃいいだけです。来年に期待。




:機体について

今回の機体、様々な方面から期待されていただけあって結果は悔しい限りなのですが、技術面では、貴重なデータを得ることが出来ました。


そもそも、今回の機体の最大の特徴は、形状や引込脚ではありません。「不安定さ」なのです。
「機動性」と言ったら格好良いかもしれません。


タイムトライアル機において求められる要素は

:速度
:機動性
:必要パワ

の三つに集約されると思います。
必要パワは速度の3乗で増加します。そのため、あまりに速度を大きくしすぎると必要パワが余計に増えてしまい、パイロットに高負荷が掛かります。

その点に関しては空力設計でどうにでもなるのですが、機動性に関しては別です。主翼やパイロットの幾何学的配置や機体剛性等、様々な要素を検討する必要があります。


我々のチームの伝統である「低翼型」というのは、飛行機一般では高翼機に対して不安定なものとして扱われます。即ち、タイムトライアル部門で低翼型は「有利」なのです。不安定な方が曲がりやすいのは、感覚的にも分かりやすいと思います。

この利点を最大限生かすにはどうしたらよいか。簡単にまとめると

全ての重量物を主翼に近づける
・軽量化
・主翼のサイズを小さくして剛性を上げる
・上反角を小さくする
・投影面積を減らす

こういった風になります。
特に一番上が今回最も重視した点になります。

人力飛行機で最も重いものは「パイロット」です。全重量の7割程度を占めています。次に主翼です。2割弱程度。
パイロットを主翼近辺に近づけるとどうなるか。飛行機は圧倒的に「不安定」になります。ガックンガックン飛行機は動きます。これが最大のポイントです。要は慣性モーメントを減らしているのです。これのおかげで尾翼も小さくできますし、舵角も小さくてOK。

さらにコックピットの形状を見直し、従来のネックであった「プロペラ配置」を「引込脚」という新技術でカバー。これだけで20%は軽くなりました。引込脚を除けば、コックピットを構成するパイプはたったの1本です。軽くなって当然です。


主翼は剛性重視。他と比較すると分厚い主翼になっています。エルロンを搭載することも可能(というよりその予定だった)です。それに伴い上反角も小さいです。来年はエルロンか?



このように機動性重視の飛行機設計となったため、他とは全く異なる形状となりました。ただ、どちらも狙ってのことです。新しい形状・機構にしたかったというのも十分あります(カッコいいし)。
全ての要素を検討し、上手く組み合わせてこそ設計です。



さて、これで私含め院生は完全に引退です。6年も鳥人間やってれば、色々と見えてくるものだと実感しています。




来年に期待!

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